アダルト向け雑誌の代名詞ともなっている「プレイボーイ」、その表紙にアニメ・キャラクターの「マージ・シンプソン」が登場する。トレードマークの蜂の巣頭で、バニーの頭に半分隠れたヌードを、読者に向かってデモンストレートしているところが微笑ましい。
プレイボーイのカヴァーといえば女性のヌードと決まっていたので、これは歴史的な転換といえる。なにがプレイボーイにこの選択を迫ったのか。
マージ・シンプソン自身は、アメリカのテレビ文化の中で、国民的な人気を誇るアニメ・キャラクターだ。これまでに映像文化に関する賞を何度も受賞してきたし、今年はデビュー20周年を記念して切手のデザインにも採用されたほどだ。
彼女はアメリカの古き好き母親像そのものなのだ。夫と三人の子供を持ち、家族の舵取り役として、また精神的なよりどころとして、家族のみんなを暖かく見守っている。大草原の小さな家を率いていた父親が、開拓時代におけるアメリカ人の理想的な親の姿をあらわしていたとすれば、マージは現代家族のあるべき母親像をあらわしているのだ。
そんなマージだから、アダルト向けの話題とは、縁もゆかりもないといえる。それがいかに漫画とはいえ、ヌードの姿でプレイボーイの表紙を飾るのだ。店頭に並ぶのは10月16日ということだが、すでに発売前からかまびすしい噂が流れている。
プレイボーイの編集長スコット・フランダース Scot Fkanders は、ロイターのインタビューに答えて、この試みを Tongue-in-Cheekといっている。ブラック・ユーモアといったところらしい。マージの原像がクリーンなだけに、彼女のヌードは巨大なインパクトをもたらすと考えているのだろう。
プレイボーイといえば、一時は世界中に愛読者を持っていた。男性読者たちは女性のヌード写真に釘付けになり、またアダルトな記事からはエロティックな関心を満足させていた。
だがいまやインターノット上には、ポルノグラフィックな映像が溢れている。表現もどぎつさを増幅させ、人間の性的欲望のあらゆるフェーズに対応するようになってきている。そんな時代の中で、ヌードの女性の気取ったポーズを乗せることくらいでは、多数の読者を獲得することはできなくなった。
フランダースはこんな時代風潮に答える形で、プレイボーイが今後も生き残るにはどうしたらよいか、考えているのだという。今回はその問いについての、ひとつの回答だというのだ。
果たしてプレイボーイは、21世紀にも生き残り続けられるだろうか。
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