カナダのムスコカで開かれた G8 サミットに引き続いて、同じカナダのトロントで G20 が開かれた。 G8 では北朝鮮への非難声明などが大きな話題になったが、 G20 のほうは血なまぐさい騒ぎに彩られ、普段は平和なトロントの市民を大いに驚かせた。
というのもアンチ・グローバリゼーションや環境保護の団体の一部が過激な行動をとったことが発端になって、えらい騒ぎになったからだ。抗議運動の参加者たちは、始めはごく平和なデモを行っていたようだが、一部のアナーキストが暴力的な行動に及び、警察官を挑発してパトカーを炎上させたりしたのだ。
これに対して警察当局のほうは催涙ガスをデモ隊に浴びせかけ、参加者たちを次々と逮捕・拘束した。
二日目には逮捕された人々を臨時に収監する施設の周辺をデモ隊が取り巻いたが、これに対しても警察側は催涙ガスをお見舞いし、デモ参加者たちを逮捕し続けた。その総数は二日間で600名を超えたという。
それにしても、何故いまごろこんな事件が世相をにぎわすのだろうか。少なくともトロント市民にとっては、こんな事件が起こるとは夢想だにしていなかったことだ。
アンチ・グローバリゼーションの運動が最大の高まりを見せたのは1997年に行われたWTOのシアトル大会に際してだった。そのときの抗議運動の合言葉は、グローバリゼーションが世界の富の偏在を固定化するというものだった。だから手段は別にして、その主張するところには一理あったといえる。
ところが今回の抗議運動には、世界の人々に同情してもらえるような要素は全くないといってよい。たしかに愛すべき動物たる鯨を護ろうとか、地球温暖化を食い止めようとか、それなりの言い分はあったようだが、緊迫性という面に欠けている。
今年のG20のテーマは各国の財政秩序と成長成長との両立を図ろうというものではなかったか。そんなテーマを論じているところに、鯨の命の尊さについて滔々と叫んでも、あまり効果がないのではないか。これでは過去の主張の亡霊だと評されても仕方がないのではないか。
もっとも新聞の中にはデモ隊に同情的なものもあるようだ。ニューヨーク・タイムズなどは、デモ隊は平和だったのに、警察が不用な挑発をしたために、一部が暴徒化したのだといっている。(上の写真:ロイター提供)
コメントする