エレーヌへのソネット第19番:ピエール・ド・ロンサール

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ピエール・ド・ロンサールの詩集から「エレーヌへのソネット第19番」(壺齋散人訳)

  いくたびも睦みあい いくたびも仲たがいし
  いくたびもいがみあい いくたびも仲直りする
  いくたびも愛を罵り いくたびも愛を讃え
  いくたびも遠ざけあい いくたびも求めあう

  いくたびも離れあい いくたびも探しあい
  いくたびも傷つけあい いくたびも慰めあい
  永遠の愛を誓うそばから その誓いを破る
  これは愛にとってはありがちな姿なのです

  愛のしるしとはままならないもの
  憎しみのそばに慈悲の心が同居し
  誓いはすぐに破られ 約束はあてにはならぬ

  あてのないものを望み つれないものを追い求める
  これこそが愛の姿とわきまえましょう
  平安の影にはいつも不安がきざしているもの


ピエール・ド・ロンサールは1578年に、「作品集」1578を刊行するが、その中に「エレーヌへのソネット」が含まれていた。「マリーの死」とともに、ロンサールの晩年を飾る優れた作品集である。

エレーヌは、王母の侍女として宮廷に仕えていた女性である。ロンサールが彼女とであったのは、1570年以降のことらしい。フランスには宗教戦争が勃発して、さまざまな悲劇が生じるが、エレーヌ自身も、夫を殺されていた。

エレーヌは聡明な美しさに輝いていた。そんなエレーヌをすでに初老の男となったロンサールは愛した。

100篇以上のソネットのなかで吐露されたエレーヌに対するロンサールの愛は、肉と心の葛藤、精神的な結びつきへの両義的な感情といったもので満たされている。


  Tant de fois s'appointer, tant de fois se fascher,
  Tant de fois rompre ensemble et puis se renoüer,
  Tantost blasmer Amour et tantost le loüer,
  Tant de fois se fuyr, tant de fois se chercher,

  Tant de fois se monstrer, tant de fois se cacher,
  Tantost se mettre au joug, tantost le secouer,
  Advouer sa promesse et la desadvouer,
  Sont signes que l'Amour de pres nous vient toucher.

  L'inconstance amoureuse est marque d'amitié.
  Si donc tout à la fois avoir haine et pitié,
  Jurer, se parjurer, sermens faicts et desfaicts,

  Esperer son espoir, confort sans reconfort
  Sont vrais signes d'amour, nous entr'aimons bien fort,
  Car nous avons tousjours ou la guerre, ou la paix.


関連サイト:フランス文学と詩の世界





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