学生時代の仲間と飲む

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学生時代の仲間たちと久しぶりに会った。幹事役のFから手紙が来て、学生時代の仲間を対象にしたSNSを立ち上げたい、ついてはみんなで協議したいから大学構内の生協食堂に参集しろと案内があった。でかけてみると、懐かしい顔が30名ばかり集まっていた。

大部分の顔は10年ほど前に見ているが、中には大学を卒業して以来40年ぶりに見る顔もある。すっかり風貌が変わってしまったものもあって、なかなか思い出せないものもある。40年前とほとんど変わっていないものもある。そんな連中を見ると、なにか不思議な気分になった。

それぞれに挨拶しあうだけでずいぶんと時間がかかった。そのうち幹事役のMが司会をして、参加者たちに一言ずつ話する機会を与えた。トップバッターは東北を拠点にしているN、あの3.11に始まる大震災を、身を以て体験した、その生々しい話をした。

これがきっかけで、大震災が大きな話題になった。日ごろ天皇制に疑問を持っていた某は、天皇ご夫妻が被災地を訪れたことに触れて、天皇が国民にとって癒しの機能を果たしていることにいたく感銘した、と語った。

Kは関西に拠点をおくグループを代表して、近く大阪でコンパを催すから、関東にいて暇と金があるものは参加しろと呼びかけた。KはまたSNSを立ち上げようと言い出した当人だ。しかし話を聞いてみると、あまり明確な方針は持っていないようだった。

都立高校の教員をしているSは、最近の教育行政について語った。教委による教員の管理が強まっているといった話だ。S自身卒業式で起立しなかったことをとがめられて、懲戒処分を食らったそうだ。大阪の知事がこれからしようとしていることが、東京では事実上確立されているといった話だった。

「俺は学校を卒業した後、医学部に入り直し、医者にはなったものの、医業はそっちのけで政治活動ばかりしていた、日医の理事もやって見たりしたが、最近は心を入れ変えてまた医業に精出すようになった。困ったことが起きたら、ぜひ相談してくれ」とUがいった。「がんになったら頼りにいくよ」と誰かが言った。

筆者も話すことを許された。そこで3月11日には豊穣たる熟女たちと横浜で遊んでいたところ、大地震に遭遇したと告白した。SNSについては、フェースブックを利用したほうが効率的だよと話した。

とにかく誰もが話し出すと長くなりがちなので、全員が話すわけにはいかないうちに、時間切れになった。そこで場所を移して、話し足りない奴はそこで話せということになった。

タクシーに分譲して新宿三丁目の交差点に行き、近くのビルの中の飲み屋に入った。しかし全員は入れない。そこで入れない連中は他の店に流れた。

我々のグループは十四五人いただろうか。それでも共通の話をするには人数が多すぎるので、勢い二つか三つのグループに分かれる。筆者は数人の気の合った連中と哲学を語った。

大学の医学部で生命倫理学を教えているFは、医学生相手にカントを語ってはならないといった。人間の存在を意識の相関者と考える立場では、意識のなくなった人間は人間でなくなる恐れがあるからだという。なるほど哲学も実際的な機能を果たすことがあるのだと、筆者は思った。

二次会を解散した後、更に語り足りない者4人とともに歌舞伎町近くのバーに入った。香港に拠点を置いている実業家Wもその中にいた。Wは学生時代からこわもてする男だった。筆者などとは人間のスケールが違う。スケールが違うから、筆者たちの話は書生っぽくて、馬鹿ばかしく聞こえたかもしれない、それでも耳を傾けてくれた。度量も大きいのだ。

「ところで」と、そんなWに向かって筆者は切り出した。「村上春樹とコネはないかい?」

村上春樹は我々と全く同じ時代に同じキャンパスにいた間柄だ。顔の広いWのことだから、もしかしたらコネがあるかもしれない。そう考えて訪ねたのだ。もしコネがあったら紹介してもらおうと思って。

だがWは、「コネはない、だがお前がどうしても会いたいというなら、あたってやってもいいぞ。それくらいのことならできる。」といった。

筆者は「いや、いいんだ。気にしないでくれ」といって、話を収めた。自然な人間関係の延長でならともかく、わざわざ大げさなコネを通じてまで会うことはないだろうと思ったからだ。

こんなわけで久しぶりに深更を過ぎてまで飲み続けてしまった。帰宅の足は無論タクシーということになった。





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このページは、が2011年5月30日 18:53に書いたブログ記事です。

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