上海、北京に一緒に旅行した友人二人と新宿西口の居酒屋土風呂で飲んだ。今年の秋にはどこに行こうか、そんな相談をするためだった。
土風呂は居酒屋チェーンで、民芸調の雰囲気が売物だ。筆者は銀座一丁目にある店には何回か入ったことがあったが、この手のチェーン店の中では雰囲気もいいし、食い物もまあまあだった。新宿のこの店には初めて入った。
生ビールを二杯ずつ飲んだあと、焼酎のお湯割を飲んだ。薩摩の芋焼酎黒伊佐錦といって、値段の割にはいい味がする。つまみには刺身の船盛と串もの数種、それと豆腐を頼んだ。豆腐が一番うまいと二人が言う。
挨拶が一通り終わると、3.11のことがまず話題に上った。二人とも高層ビルの20階前後のところで地震を迎えたが、あまりに強い揺れに恐怖を感じたそうだ。でも机や什器類が倒れたりはげしく動いたりするようなことはなかった。しかし周囲の超高層ビルの中には、こんにゃくのようにゆらゆらゆれていたものもあったので、そんなところでは机が吹き飛ばされたり、棚が落下してもおかしくないと感じたそうだ。
その夜は二人とも普通には帰れなかった。横子のほうは自席で待機し、そのうち地下鉄が動いたので、それに乗って帰った。今子のほうは、通勤難民対策の要員として残業を命じられ、結局その夜は家に帰ることができなかった。もっとも帰ってよいといわれても、交通手段を確保することはできなかっただろう。
みな筆者と同じような目にあっていたというわけだ。
ついで本題の旅行の話になった。さて、どこへ行こうか。筆者は江南の古都めぐりはどうだといった。杭州を拠点にして、紹興や寧波、烏鎮の水郷地帯をめぐる。食い物もうまいに違いない。
ところが横子が、このいずれにも行ったことがあるいという。だからできたら他のところに行きたいという。どこに行きたいんだいと聞くと、四川省の成都あたりに行ってみたいという。
成都は三国志の舞台にもなった古い都で、杜甫にもゆかりのある町だから、筆者にも異存はなかったが、ただ反日感情が強いのが気にかかる。でもまあ、年がら年中反日感情が渦巻いているわけでもなかろうから、行ってみる価値はあるなという具合に、今年の秋は成都にいこうということに決まった。
杜甫が歌ったころの成都は自然が豊かな美しい町だったようだ。今はどうか知らないが、四川盆地最大の都市であることは変わりがない。中国では成都と重慶をあわせて成渝地区(渝州は重慶の古名)といい、人口が密集する大工業地帯としてのイメージが確立しているようだ。
重慶の町の様子はNHKの番組で紹介していたのを見たことがある。シックな建物が並ぶ街並がアットホームで美しい雰囲気をかもし出していた。成都もそのように美しいのだろうか。この目で確かめる価値はあるだろう。
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