イギリス映画「鉄の女の涙」のロシア海賊版が、当のイギリスで話題になっているそうだ。きっかけはガーディアンの記者がコメルサントの映画批評を読んだことだ。その批評の中で、サッチャー首相がインタビューに応えながら、「労働者階級を粉砕します、彼等は人間の屑です」といっている場面が取り上げられているが、そんな場面は原作のどこにも存在しないので不審に思ったら、この映画がサッチャーをことさらに誹謗するために作られた海賊版であることが判明したというのだ。Iron Lady lost in Russian translation Margaret Thatcher depicted as a Hitler-admiring leader who wants to destroy the working class in a pirated version of the film Kevin O'Flynn
ロシアでは、原作の意図とは異なるものを盛り込んだ翻訳で海賊版を作ることが珍しくないが、コメルサントの映画批評家はそれを承知のうえで批評したのか、あるいはうっかりして海賊版の意図に乗せられてしまったのか、ガーディアンの記者はいぶかっている。
というのも、海賊版そのものも、記者の映画批評も、サッチャー女史を血に飢えたヒトラーのような人間として描きなおしており、観客や読者に、サッチャーについての誤ったイメージを植え付けるだろうからだ。
中立が売り物のコメルサントとしては勇み足だったというのが、ガーディアンの記者の印象だったようだ。
ところでサッチャー女史に「鉄の女」というあだ名を献上したのは当時のソ連のロシア人だった。もっともこう呼ばれたサッチャー女史も、まんざら不愉快というのでもなかったようであるが。
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