自分の家のどこかに、赤の他人が住みついているとしたら、誰しも気味が悪く思うだろう。昔の古い家の天井裏には青大将が住んでいたこともあったが、これは家の守り神などといって、大目に見られていた。しかしことが人間となると、そう大らかではいられない。
福岡県で一人暮らしをしている57歳の男が、日頃冷蔵庫の中身が知らない間に減っていることに気づいたのは最近のことである。自分以外に誰も住んでいないのに、何故冷蔵庫の中身が減るのか不審に思った男は、家の中に監視カメラを据えて、自分が留守の間、家の中で何が起きているか調べてみた。
すると驚いたことに、自分の留守中、家の中には女の姿が映っていたのである。男は警察に通報し、一緒に現場に駆けつけてみると、クローゼットの中に一人の女が寝そべっていた。
警察の事情聴取に対して、女は年齢が58歳であること、この家には一年前ほどから住みついていること、などを白状した。女のいたクローゼットは、畳一枚分ほどの広さしかないが、この中にマットレスやらペットボトルやらを持ち込んでひっそりと暮らしていたというのだ。
何故こんなところに住みついたのかという質問に対しては、女は他に住むところがないからと答えた。わかりやすい答えだ。この家ばかりに住み続けると、露見する危険が高まるので、他にも何箇所か同じような住処を作り、それらを交互に異動してもいたらしい。
一年もの間、知らぬままに他人と同居していた男の驚きは大変だったろう。それにしても、こんなに長く気がつかないでいたとは、我々部外者にとっても驚きの種だ。しかも場所が場所だ。この男は着替えのためにクローゼットを開けることがなかったのだろうか。
このせちがらい世の中で、女のホームレスも珍しくなくなった。女は男に比べて路上生活の危険度が高いから、身の安全を求めて、こんなヤドカリ生活を選んだのだろう。
この女はその場で逮捕された。どうやら新しい宿は留置所の中になりそうだ。
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