アイスランドが国の破産に直面

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今回のアメリカ発金融危機はあっという間に世界中を飲み込んでしまった。倒産する金融機関が続出し、各国は資本の注入や資金の貸付など対策に大わらわだ。そんな中で、国そのものが破産する事態まで見えてきた。アイスランドがその一例だ。

アイスランドでは大手金融機関の殆どが債務超過に陥り、事実上の破産に追い込まれたため、国がすべての銀行を国有化して難局に当ろうとした。しかし処理すべき損失は余りにも巨額で、国の財政能力を遥かに上回る。このままでは、国そのものが破産する恐れが強い。

アイスランドといえば、人工32万人ほどの小さな国だ。それなのに経済活動では大国並みのパフォーマンスを演じてきたことで知られる。人口に見合わぬほど国の経済規模は大きく、一人当たり国民所得は世界最大だった。

それが可能になったのは、アイスランドが世界の金融市場をうまく利用してきたからだ。アイスランド政府は金融を思い切って自由化し、自国の金融機関にそれこそ何でもできるような条件を作ってやった。

その結果アイスランドの金融機関は、世界中で最も派手なマネーゲームに熱中してきた。自国内部から調達できる資金は限られているから、外国から資金を借り入れ、それを有利な投資先につぎ込むというやり方である。借りた金の出所には日本の円も含まれている。低利な資金が魅力的だったに違いない。

投資の対象は主にイギリスの産業界だった。とりわけリテール部門に巨額な投資を行い、有力企業をいくつも傘下に置くほどの勢いだった。また人気サッカーチームを買収したりもして、イギリス経済に深く食い込んでいたといわれる。ハイリスク・ハイリターンの金融商品を大規模に買いあさっていたのはいうまでもない。

アイスランドはいわば、他人の褌で相撲を取ってきたわけである。それは、世界経済が順調だったからできたことだ。しかし今回の金融危機はその条件を足元から崩した。アイスランド経済に残されたのは、巨額の借金ばかりという事態を前に、どうやったら立ちなおしを図ることができるか、アイスランドは今や瀬戸際に立たされている。

仮にこのまま事態が悪化して、国の破産ということになれば、どういうことがおきるか。

まずアイスランドの貨幣は紙くず同然になる。対外的な決済手段としてほとんど意味を持たなくなるだろう。すでに現在でも、対ユーロの為替レートは半分以上下落したという。

貨幣価値が下落するわけだから、輸入品は必然的に高騰する。アイスランドのように多くを輸入に頼っている国は、すさまじいまでのインフレに見舞われるだろう。

このように国が対外的な信用を失墜する事態と平行して、国民生活も窮乏する。第一次大戦後のドイツや、太平洋戦争終了直後の日本と同じような状態に陥るわけである。

今回の世界の金融危機は、ここ10年間ほどの間に世界を席巻したマネーゲームの破綻によるものだ。その破綻が個々の企業を超え、国の破綻までもたらそうとしている。


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