台風12号:死者24人、不明54人

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9月2日から4日にかけて吹き荒れた台風12号は、各地で大きな災害をもたらした。この記事を書いている今の時点(9月5日朝)でのネット上の報道では、死者24人、不明54人となっている。最も被害の大きかったのは和歌山県で、11人が死亡、29人が行方不明とある。

この台風は日本に接近してから山陰沖に通り過ぎるまで、まる三日もかかった。その間中すさまじい雨を降らせた。この雨が土砂崩れや河川の氾濫を招き、大勢の人が家ごと土砂に流されたり、車ごと濁流にのまれたりして亡くなった。今までの台風とくらべて、被害のスケールが大きい。

台風の速度が遅かったことには、それなりの原因がある。日本上空のジェット気流が例年とは異なって北寄りになっていたのではないか。通常、日本列島に接近した台風はこのジェット気流に飲まれるかたちで急速に飛び去るのだが、今年はいつまでも列島付近に停滞した。それが思いもよらぬ被害の拡大をもたらしたということだろう。

被害は台風の通過したルート周辺よりもむしろ、それを外れたところで大きくなった。

台風は高知県に上陸した後北上し、岡山県に再上陸した。この道筋にそったところでは、厳戒態勢が敷かれ、岡山県南部では数十万人に避難勧告が出された。だが実際に被害がすさまじかったのは、台風の南東方向に位置する和歌山県や奈良県だった。台風の旋回にあわせて、大量の水蒸気が押し寄せ、それが大雨になったものだ。このため奈良県上北山村では降り始めからの累積雨量が1652ミリ、三重県大台町では1519ミリと、いずれも観測史上最大になった。

この台風への、日本の関係機関の対応を見て、今年アメリカ東海岸を襲ったハリケーン・アイリーンに対するアメリカの対応を思い出した。ハリケーンの通過が予想される各州では、ハンリケーンが接近する数日前から万全の準備に取り掛かり、沿岸部では数百万人単位での避難命令が出された。勧告ではなく命令だ。しかし住民たちは大して不平を言わずに命令に従った。その成果があったのかどうか、厳密なところはわからないが、被害は予想していたよりも小さくすんだ。それでも死者の数は26人、停電した世帯は500万戸にのぼった。

これに対して日本の関係機関の対応には、もう少しやりようがあったのではないかと思わせるところがある。たしかに台風の通過が予想される地域では、大量の住民に避難勧告が出されたが、通路を外れた地域では、油断があったのではないか。その油断が、被災した人の数を思いがけず大きくしたのではないか。そんな風に受け取れるのだ。

日本は台風の通り道で、古来台風については繰り返し痛い目にあってきた歴史がある。今回の台風だって、どんな動きをして、どんな危険が待ち構えているか、決して事前にわからなかったわけではあるまい。

日本の防災体制には、国民の命を守るのだという視点をしっかり取り入れて、もうすこしきめの細かい対応を望みたいものだ。(写真は四国沖に目がある台風12号:NASAから)





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このページは、が2011年9月 5日 21:01に書いたブログ記事です。

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