ハレディム(Haredim):イスラエルの超伝統主義者たち

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ハレディム(Haredim)と呼ばれる超伝統主義のユダヤ人社会が、イスラエル国家にとって大きな問題として浮かび上がってきたという。これまでは国民全体に占める割合が圧倒的に小さかったため、あまり問題にされなかったが、今や人口の1割を占めるようになり、しかも2034年には2割にも達するだろうと予測されているように、イスラエル国家の中での存在感を急激に高めてきたことがその背景にある。

彼らが問題として意識されるのは、その余りにも並外れた世界観が、イスラエルの一般国民と極めて異なっているからだ。彼らは近代科学の成果を一切信じない。伝統的なユダヤ教の教義の研究に一生を捧げ、世俗的に働こうとしない。したがって所得は低く、彼らの60パーセントは貧困ライン以下の生活をしている。しかもイスラエルの若者に課されている兵役義務からも免除されている、といった具合にその極端な生き方が一般のイスラエル人にとって異物のように映るからだ。そういう人々が人口のかなりの部分を占めるようになったらどうなるのか。

そんな問題意識から、ハレディムたちの最近の動きを分析した論文がNewsweek の最新号にのっている。The Ultra Orthodox Jewish State By Dan Ephron

ハレディムたちはベン・グリオンがラビの支持を獲得するための代償として兵役義務を免除したことをはじめ様々な特権を与えたことをきっかけにしてイスラエル社会に根を下ろしたとされる。

男は19世紀のユダヤ人社会と異ならぬファッションをし、女も黒い衣装に身を包む。男女はともに行動してはならず、バスの中でも、男が前の席に女が後ろの席にと云った具合に、公の場ではどこでも離れ離れに行動せねばならない。

先述したように男が世俗的な職業に就くことはまれだから、所得は非常に低い。それなのに、出産率は異常に高い。どの家庭でも10人前後の子どもがいるといわれる。こうした事情が彼らの人口を急速に増大させ、上述したような社会問題化するきっかけとなったわけなのだ。

イスラエル政府はヨルダン川西岸の占領地へのユダヤ人の入植政策を進めてきたが、その中核を担ったのはハレディムたちだった。モリイン・イディトという入植地は人口6万人の町に成長したが、住民の殆どはハレディムだ。したがって町の財政は非常に貧しい。税金の収入が少ないからだ。その結果道路や公園と云った公共施設が極端に不足している。

住民の殆どはテレビやパソコンを保有していない。それは貧しいからだけではなく、彼らが近代科学の成果に興味を示さないからだ。

彼らは神学的な世界観の中で生きているわけだが、政治的には非常にタカ派であることで知られる。とりわけ土地の事でアラブ側に譲歩することには極端なアレルギー反応を示す。

今後彼らの数がますます増えることで、イスラエルはどのように変わっていくだろうか。「より貧しく、より無教育で、よりタカ派的な政治姿勢が蔓延するようになるだろう」とテル・アヴィヴ大学の経済学者ベン・ダヴィドは予言している。

少なくともアラブとの共存という理念は実効性を失うだろう。(写真も Newsweek から)





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このページは、が2012年1月 5日 20:02に書いたブログ記事です。

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