大西洋とインド洋の亜南極地帯の島嶼に生息するオウサマペンギンは、南極圏に生息するコウテイペンギンに次いで大型のペンギンである。かつては亜南極の海に広く分布していたが、19世紀中に、航海者によって乱獲され、一時絶滅寸前にまで減った。船乗りたちはオウサマペンギンの脂肪を料理用の油として使っていたのである。
20世紀に入ると、海の男たちはオウサマペンギンの油に頼らなくなった。ほかに良質の油を持ち歩くようになったからである。乱獲を逃れたオウサマペンギンは再び個体数を増やすようになり、今日では200万頭ほどが生息していると見られる。
ところがそのオウサマペンギンに新たな災難が降りかかるようになってきた。たびたび食糧難が彼らを見まい、そのたびに餓死するものが馬鹿にならない数に上るのである。その原因は地球温暖化にあると、専門家はみている。
フランスの専門家グループが8年間かけて行った追跡調査によると、ペンギンの生存率と海面温度との間に高い相関性が見られた。海面温度が上昇するに伴い、ペンギンの死亡率も上昇するのである。試算結果によれば、華氏0.47〔摂氏0.26〕度の上昇が、9パーセントの個体数減少につながるという。
海面温度の上昇は、ペンギンの餌となる小動物の減少をももたらし、それが食物連鎖を通じて、ペンギンの食糧確保に響くのだと、推測されている。このことは逆に、海面温度の上昇が、海域全体の小動物にとって致命的な悪影響をもたらしていることを示している。
地球温暖化によって、このまま海面温度の上昇が続けば、そう遠くない未来にオウサマペンギンは絶滅してしまうだろう。
同じような危機は、ホッキョクグマにも起きている。ホッキョクグマは氷に穴を開けて、その下に潜ってアザラシなどの動物を捕まえて食べている。彼らは氷上のハンターなのだ。ところが地球温暖化の影響で北極圏の氷がどんどんなくなっている。ホッキョクグマの捕食の環境が急速に悪化しているのである。
地球温暖化の影響は、南北両極地においてはより強い程度で現れる。オウサマペンギンの生息する地域においては、過去50年間に、海面温度の上昇率が、平均より5倍も高かったという。
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