野村證券が破綻したアメリカの証券会社リーマン・ブラザースのアジア部門とヨーロッパ部門を買収すると発表し、続いて三菱UFJ銀行がモルガン・スタンレーの株式を20パーセント取得して筆頭株主になるというニュースが流れて、世界を驚かせた。
日本の金融機関は、ここ数年間における世界の金融市場では、二番手三番手を走るとみなされていた。なにしろ、この数年間の世界の金融市場は、空前の好景気を受けて、いけいけどんどんの雰囲気が支配し、事業を拡大する路線を突っ走ってきた。それに対して日本の金融機関は、失われた10年といわれるような金融市場の混乱を経験して、何事につけ保守的な対応が目立つとされてきた。いわば世界のマネーゲームの舞台にあって、傍観者扱いされてきたのである。
それが一挙に、マネーゲームの主役だったものを買収したり、筆頭株主に踊り出ようというのだから、世界が驚くのも無理はない。
世界規模の超ブランド金融機関を、日本の金融機関が支配下に置くことは、数年前なら考えられなかったことだ。何がそれを可能にしたのか。
専門家の見方によれば、日本の金融機関は、世界中が金融バブルに踊っている間に、保守的な経営姿勢に徹してきた。良くいえば堅実経営、悪く言えば、無為無策である。ところがこの無為無策がかえって、時代の流れに飲み込まれず、企業としての体力を温存させる効果をもたらした。
いま欧米の金融機関は、自分の存続に精一杯で、他の企業を買収したりする余裕はない。一方日本の金融機関には、使うべくして使わなかった金が有り余っている。その金を使うタイミングは今をおいてない。彼等はそう判断したのだろう。
日本経済と日本の企業は、今世紀に入って地盤沈下を続け、いまや世界のエリート集団から取り残されつつある。自力でそのステータスを取り戻すことはむつかしい。自分で蛸壺の中にもぐりこんでしまったおかげで、世界の情勢に明るい人材にも乏しい。
だからこの際世界の超一流企業を買収したり傘下におさめることによって、彼らの持つノウハウを活用できることは貴重なことといえる。これを機会に、日本の金融機関も世界規模のマネーゲームに参加できるようになるかもしれない。
いずれにせよ、日本の金融機関が今後グローバルな展開ができるかどうか、それは彼ら自身の努力如何にかかっている。
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