激増するアメリカのホームレス

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今年のクリスマスは、多くの人々にとって苦々しいものになったろう。突然吹き起ったともいえる不況の風にあおられて、職を失い、場合によっては住むところを失って、路上でサンタクロースの到来を待ったものもいただろう。

アメリカでも異なるところはない。むしろ日本以上に深刻な事態に陥っているようだ。その象徴ともいえるホームレスが、ここ数ヶ月の間にドラスティックに増えたばかりか、就学児童の中に住む家を持たない子、所謂ホームレス・ステューデントが増加し、大きな社会問題となっている。

アメリカの新学期は9月に始まるが、今年はそれ以後わずか3ヶ月の間に、200万人もの児童がホームレスに陥ったか、あるいは陥りかけているという。その背景には経済不況によって失業する親たちの増大と、その結果としてローンを支払えずに抵当流れに直面し、家を失う人々の増加がある。

アメリカのホームレス対策の基本は、シェルターと呼ばれる臨時宿泊施設への収容だ。だがホームレスの増大があまりにも急速だったせいで、シェルターの数がホームレスの増大に追いつかない。こうして車の中で暮らしたり、公共施設の周囲に身を寄せざるを得ない家族が増えた。

アメリカの連邦法は、就学児童がホームレスに陥った場合には、学校への通学手段や食事、教材などを無料で提供するよう、州及び市の行政当局に義務付けている。今や自治体の予算の大きな部分がこうしたホームレス・ステューデント対策に食われている状態だ。

日本ではいま、非正規雇用労働者が突然首を切られ、ホームレスに陥るケースは増えているが、アメリカのように家族そろってホームレスになる例はそう多くはない。日本独特の親族関係のあり方や、生活保護制度の存在がそうした事態を食い止める防波堤になっているからだろう。

しかし日本の社会のあり方は、以前に比べて欧米流に変わってきつつある。それと平行して、ワーキングプアと呼ばれる人々の割合が急速に拡大しつつある。こうした趨勢が今後も続けば、日本もやがて、アメリカと似たようなホームレス問題に直面するようになるかもしれない。


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