習近平とはなにものか

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胡錦濤にかわる中国の新しい指導者として、習近平(上の写真*AP提供)の登場がほぼ確定的になった。そのことを受けて、世界中のジャーナリストがさまざまな憶測記事を書いている。視点のひとつは、中国の政権交代の特質について論じるもの、もうひとつは、習近平とはいかなる人物か、その政治的・人間的側面について論じるものである。

中国の権力交代は、かつては激しい権力闘争を伴っていた。それが革命第四世代に当たる胡錦濤の時から、平和裏に行われるようになった。今回はその平和な政権交代が、確固とした基礎の上に整然と行われたという点で、中国政治の一定の成熟ぶりを印象付けた。

だが、胡錦濤が登場したときもそうだったが、たいした権力闘争もなく、党の総意に基づいて指導者になったはずの人物が、外国人の目には、初めは不可解に映ったように、今回のケースでも、習近平がどのようなプロセスを経て指導者に選ばれたのか、よくわからない点が多い。したがって、習近平がどのような性格の人物で、またどのような政治的スタンスに立っているのか、それもよくわからない、というのが大方の印象だろう。

習近平はすでに国家副主席として1年のキャリアを積んでおり、一定の外交活動もしているので、その間にした発言などをもとに、その政治的側面を読み解こうとする試みがなされている。

たとえば彼は「西洋人が中国を批判したがるのは、満腹してほかにすることがないからだ」といったことがある、その発言をとらえて、この男は唯我独尊的な傾向が伺われると書いた記者がいた。

また日本を訪れた際に、皇室側の設けた接見のルールを逸脱してまでも、天皇との会見を実現させたことがあった、これをとらえて、その傲岸不遜振りに憤るものもいる。

傲慢という点では、習近平の妻彭麗媛にも同じような逸話がある。彭麗媛は中国共産党の責任者として、昨年歌舞団を率いて日本に来た、その折皇太子の臨席にこだわって、とうとうそれを実現させた。これは日本の皇太子を自分の政治的な利益にために利用したのだ、そういって憤る人が多いのだ。

習近平がこれまであまり知られていなかったのにたいして、妻の彭麗媛は国民的アイドルとして広く知られている。こんなところから、習近平は妻の人気にあやかって出世できたのだと、やっかみめいたことを言う人もいるくらいだ。

それはともかく、力量の未知数な習近平には、巨大な課題(経済的・政治的な)がいやおうなく待ち構えている。

経済的には、国民の間の格差をどう埋めるかという課題だ。たしかに世界第二の経済大国になったとはいえ、一人当たりの国民所得は後進国なみであるし、富めるものとしからざるものとの格差が余りにも開きすぎた。この差をどうやって埋め、一人ひとりの所得を底上げするか、これが今後の待ったなしの課題だ。

政治的には、国民の権利の拡大と民主主義の実現だろう、そのためには早晩共産党による一党独裁のあり方が問題になってくる、習近平にとっては悩ましい課題だろうが、真の意味で世界の大国となるためには避けられない課題だ。

また日本を始め近隣諸国との関係においても、大国らしい節度が求められるだろう。今の中国のやり方をみていると、南シナ海での領土をめぐるパフォーマンスなど、とても節度ある態度とはいえない、むしろ海賊行為に近いことを平然とやっていると、周辺国から警戒される有様だ。

こうしたさまざまな課題に習近平がどのように応え、中国という大国の舵取りをどうこなしていくのか、いろいろな意味で注目されるところだ。


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このページは、が2010年10月23日 17:53に書いたブログ記事です。

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