宇宙の渚

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地球の大気圏の外側にあって宇宙の暗黒との接点になっているところを、宇宙の渚と呼ぶことができる。地球を陸地に、宇宙を海に譬え、その両者が接するところを渚としてイメージするわけだ。

この言葉を思いついたのは、NHKスペシャルのスタッフだという。彼らはこの宇宙の渚で日々起こっている不思議な現象を、地上から見上げるのではなく、宇宙の高みから見下ろす試みに挑戦した。筆者は初めての試みだというその番組を見て、久しぶりに心が躍るほどの興奮を覚えた。

番組は現在国際宇宙ステーションでミッションに従事中の日本人宇宙飛行士古川聡さんに協力してもらって、独自に開発した超高感度カメラで宇宙の渚で繰り広げられる光景を写し取ってもらっていた。国際宇宙ステーションは、高度400キロの軌道を地球一周90分(秒速8キロ)という猛スピードで回っている。その場所から撮影する宇宙の渚での出来事は、文字通り上から見下ろすような形になる。

番組が力を入れて紹介していたのは、オーロラ、流れ星、そしてスプライトといわれる放電現象だ。この三つを合わせて、番組は三大スペクタクルと云っていた。

地上から見上げるオーロラと違って、上から見下ろすオーロラはリング状の形をしていた。このオーロラは、宇宙の彼方からやってきた電子が大気圏の酸素とぶつかって光を出す現象だ。それがなぜリング状の模様を描くのか、そこまでの理屈は良くわからなかった。

流れ星の実体は0.1ミリからせいぜい1ミリ程度の微小な宇宙の塵だという。これが大気圏に突入するときに、燃え尽きて光を放つ。地上から見ていると、流れ星の数はそんなには多く感じられないが、実際に計算してみると、なんと一日に2兆個もあるそうだ。ほとんどは微細な塵だから、地球へのダメージはほとんどないが、場合によっては隕石のようなものが地球に突入することも勿論ある。現在の宇宙研究のレベルからすれば、そうした隕石の接近はあらかじめキャッチすることができるそうだ。

スプライトと云われる現象は、地上からは見えない。地上から見えるのは雷である。雷は大気圏の放電現象が地上に向かって落ちる現象だが、スプライトはこの放電が宇宙空間に向かって放出される現象だ。400キロの上空を周回している宇宙ステーションだからこそみられる光景なわけだ。

この番組は、古川さんによる実況放送をも紹介していた。古川さんがカメラを地上に向けて、ヨーロッパの夜景やサハラ砂漠を写し取っていた。なにしろ90分で地球を一周する程なので、次から次へと景色が交代していく。その様子をみていると、そこに国境があることなどすっかり忘れてしまう。

月が地表の彼方へと沈んでいくところも見せてもらった。地球のあちら側に見えた月は思いのほかに小さく見えた。それがすとんと落ちるように、地球の背後に消えて見えなくなった。

NHKでは、この高感度カメラがとらえた宇宙の渚の映像を編集して、来年4月以降に順次紹介してくれるそうだ。(映像はスプライトを写したもの)





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このページは、が2011年9月19日 20:53に書いたブログ記事です。

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