全米経済研究所 National Bureau of Economic Research が、2007年12月に始まった景気後退は2009年6月で収束していたと発表したことで、複雑な反響が生じている。
反響の複雑さは、この見方に対する評価が分かれていることに現れている。
一方では、素直に受け取る評価で、そういう人々は、18ヶ月にわたった今回の景気後退が、1929年の株式暴落に始まる大恐慌よりも長かったことを、改めて驚きの念を以て受け止める。他方では、いまだに力強いとはいえない経済状況を、景気後退が収束していないことの証拠だと、懐疑的な見方をするもので、この見方に立つ人は、景気の二番底もありうると考えている。
経済の素人である筆者などは、あまり大きなことは言えないが、次のように考えている。
たしかにアメリカの景気後退は、2009年の半ばごろに収束し、その影響は日本にも及んできたが、その後力強い跳ね返りにはつながらず、ほぼゼロに近い低成長が続いている。このため、雇用などの国民生活に直結する指標が一向に改善されず、それが景気回復を実感できない状況をもたらしていると。
この状態はまだ当分続くだろうと、筆者は予想している。一部の学者がいうように、景気の二番底は来ない可能性が強いが、力強い成長を実感できるような状況は当分来ないのではないか。
そう考える根拠は、グローバライゼーションの影響が、アメリカ経済にも押し寄せていることだ。中国を始めとした新興国の経済成長は、ここ数年目覚しいものがあり、それが市場の世界的規模での拡大につながった。本来ならこうしたグローバライゼーションのうねりは、アメリカ経済にプラスに働くはずのものが、そうはならなかったということだ。
ひとつには、中国やインドが巨大な生産国となることによって、アメリカなど先進国の産業が空洞化した。この結果、アメリカ社会は新たな雇用機会を生み出すことができなかった。数百万に上る巨大な失業者が、いまだ職を持てないでいる。
もうひとつは、デフレ圧力が強まっていることだ。日本の場合が典型的だったが、デフレ圧力が強まることで、名目成長率が下降気味となり、その結果、人々の間に景気が上向かないという印象が強まった。
景気は心理的な要因に作用される部分が大きい。デフレ心理が経済の実体まで縮小させるわけだ。
NBER自ら認めているように、景気の状態がこれまでの勢いを取り戻すことは、まだ当分期待できそうにないようだ。(上の写真は Economist から)
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