死の商人として、世界中からマークされていたロシア人ヴィクトル・ブートВиктор Бут がタイの警察当局によって逮捕されたのは2008年3月のこと、アメリカからの強い要請に基づくものだった。アメリカはこの人物が、世界中のテロリストとつながりを持ち、アメリカの安全を脅かす危険な人物だとして、身柄の拘束に躍起になっていたのだった。
だがタイの当局は、アメリカの要請をはねつけて、その身柄をすぐに引き渡すことをしなかった。ロシアからの強い申し入れがあったからだといわれている。タイは米ロ二大国の板挟みにあって、この危険人物を持て余した状態で抱え込むことになったのだった。
ところが先日ついに、ブートの身柄をアメリカに引き渡した。アメリカ側の強まる要求に逆らえなくなったようなのだ。ロシア側には極秘裏に行われたらしい。(上の写真はアメリカに護送されるブート:AP提供)
ブートはもともとロシアの軍部と強いつながりがあったようだ。そのつながりを生かして、ロシア製の最新鋭兵器を調達し、それをアンゴラ、コンゴ民主共和国、リベリア、ルワンダ、シェラレオネ、スーダンの紛争当事者たちに売り込んできた。取引先には、アフガニスタンも含まれているらしい。こうした取引で彼は、巨万の富を築いた。
ロシアがブートの動向に神経をとがらせた理由は、この男が取り調べられることで、ロシア製の武器がどのように密輸されたか、またそれがロシアのどのようなルートを通じて行われたか、こうしたロシアにとっては恥部ともいうべきものが暴かれかねない懸念があったためだといわれる。
(参考)Russian Arrives in U.S. to Face Arms Charges By SETH MYDANS
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