経済学と世界経済


朝日新聞が著名な経済学者ポール・サミュエルソンから、今回の金融危機の原因について聞いた(10月25日朝刊紙上)。見出しに「規制緩和と金融工学が元凶」とあるように、サミュエルソンは今回の危機の原因が、ブッシュ政権下の行き過ぎた規制緩和と、加熱したマネーゲームの横行によるものと見ている。

世界のあちこちで食糧危機が深刻に受け止められるようになってきた。アフリカを始めとした発展途上国での食料不足は数年前から大きな問題であったのだが、それがここ1年ほどの間に、先進国を含めた全世界的な現象にまで発展してきたのである。

今年(2008年)のノーベル経済学賞は、プリンストン大学教授でニューヨーク・タイムズのコラムニストとしても知られるポール・クルーグマン Paul Krugman 氏が受賞した。

今回のアメリカ発金融危機はあっという間に世界中を飲み込んでしまった。倒産する金融機関が続出し、各国は資本の注入や資金の貸付など対策に大わらわだ。そんな中で、国そのものが破産する事態まで見えてきた。アイスランドがその一例だ。

アメリカの金融危機が泥沼化の様相を見せ、その影響が国境を越えて世界中に広がった。各国の株式市場は連日大幅な下落を続けている。日本も例外ではない。ニューヨークのダウ平均価格は8000ドル前後まで落ち込み、東京市場でも8000円前後まで落ち込む異常さだ。朝日新聞によれば、9月以降の一ヶ月ほどの間に、世界中で1,400兆円の金融資産が消失したという。

ブッシュ政権によって提出された金融安定化法案が、一旦は否決されながら、数日後には劇的な復活をとげた。アメリカの憲政史上でも珍しい出来事である。しかしあれほどこの法案に拒絶反応を示した議員たちが、なぜわずか数日の間に考えを改めたのか。その内幕をワシントン・ポストが巧妙に分析している。

深まる一方の金融危機に対してブッシュ政権が全面的な介入方針を固め、7000億ドルにのぼる不良債権処理資金の投入を決めたまではよかったが、思いもかけず議会側の反発が強く、計画は宙に浮いたまま、なかなか前へ進まない。そうしている間に、S&L最大手のワシントン・ミューチュアルが破綻し、ついで巨大銀行の一角を担うワコビアが深刻な経営危機に陥る有様だ。

アメリカが陥っている先の見えない金融危機に対して、ブッシュ政権がついに全面介入する方針を固めた。議会側との交渉において説明している内容によれば、新たに7000億ドルを金融機関から調達し、それを原資に使って、金融機関の抱えている不良債権を買い取ろうというものだ。

FRB米連邦準備制度がAIGアメリカン・インターナショナル・グループに対して850億ドルにのぼる公的資金を投入する決定をした。AIGの株式79.9パーセントを買い上げる方式をとり、2年後には全額を償還する計画で、変則的な貸付方式といえる。AIGはこの資金で当面の危機を乗り切り、その間に所有財産を売却することで返済資金を捻出する計画だ。

サブプライム・ローン問題に端を発したアメリカの金融不安が新たな段階を迎えたようだ。大手証券会社リーマン・ブラザースが、連邦金融当局と大銀行とによる救済計画が破綻した結果、ついに破産申請をする事態に追い込まれた。また古い伝統を誇る証券会社メリルリンチがバンカメリカに身売りすると伝えられ、アメリカン・インターナショナル・グループは巨大規模の資産売却を決定したという。

ガソリン価格の上昇と食料品の相次ぐ値上げが、日本の消費者を直撃している。ガソリンはともかく、食料品まで値上げラッシュに見舞われている事態は、不気味なものを感じさせる。こうした値上げが、他の消費財にも広がるようようだと、広範なインフレの懸念が現実味を帯びてくる。長い間、物価の安定に慣れ親しんできた日本人にとっては、深刻な事態というべきだろう。

サブプライムローン問題に端を発したアメリカの金融不安は、すでに9ヶ月にもなるというのになかなか治まる気配を見せないばかりか、まずます不透明な様相を深めている。ドル安はその象徴だ。また先日は全米第五位の規模をもつ大手投資銀行ベアー・スターンズが事実上倒産し、JPモルガンによって二束三文で買収された。

今世紀に入って以来、日本は格差社会の様相をますます強めてきているが、この経済格差の拡大は、ひとり日本にとどまらず、先進資本主義社会共通の現象となっているようだ。アメリカはその典型で、持てるものと持たざるものとの格差が今日ほど広がった時代はないといわれる。ドイツのような、かつては日本同様活力に満ち、国民の機会均等が実現していた国でも、格差の拡大が深刻化してきている。

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