詩人の魂


病める秋 Automne malade (アポリネール:壺齋散人訳)

  病める秋よ 惜しまれつつ
  お前は死すだろう バラ園に嵐が吹きすさぶ頃
  果樹園に
  雪が降る頃

サンテ刑務所 A la Santé (アポリネール:壺齋散人訳)

   I

  独房に入る前に
  俺は裸にされた
  くぐもったうめき声がいう
  ギヨーム なんてざまだ

  ラザロが出てきた墓へ
  俺は入っていくのだ
  さらば 陽気な騒ぎ声よ
  昔の日々よ 娘たちよ

鐘 Les cloches (アポリネール:壺齋散人訳)

  美しいジプシー 我が恋人
  鳴り渡る鐘を聞いてごらん
  二人で激しく愛し合おう
  周りの人など気にしないで

秋 Automne (アポリネール:壺齋散人訳)

  霧の中を蟹股の農夫と雄牛が行く
  秋の霧の中をのんびりと行く
  霞んで見えるのは貧しくもつつましい村

  歩きながら農夫は鼻歌を歌う
  愛の歌と浮気の歌
  愛の指輪と傷ついた心の歌

  秋が夏を過去へと追いやった
  霧の中を灰色の二つの影が行く

ジプシー女 La tzigane (アポリネール:壺齋散人訳)

  あの女ジプシーは知っていたんだ
  俺たちが闇で引き裂かれていると
  それで俺たちは別れたが
  何と井戸から希望がわいて出てきた

白雪 La Blanche Neige :アポリネール詩集「アルコール」から(壺齋散人訳)

  空には大勢の天使たち
  一人は士官の服を着て
  一人はコックの姿をし
  他のみんなは歌っている

クロティルド Clotilde :ギヨーム・アポリネール(壺齋散人訳)

  アネモネとオダマキが
  庭の中で花を開いた
  メランコリーが愛と
  さげすみの合間に眠る庭

アポリネールの詩「イヌサフラン」 Les colchiques (壺齋散人訳)

  秋の牧場はきれいだけれど毒がある
  牡牛がそこで草を食むと
  そのうちに毒にあたる
  目の隈模様のリラのようなイヌサフランが咲いた
  お前の目もこの花のようなすみれ色
  青みがかった目の隈のような秋のような色だ
  その目のためにわたしの命も毒にあたる

アポリネール詩集「アルコール」から「ミラボー橋」を読む。(壺齋散人訳)

  ミラボー橋の下をセーヌが流れる
  我らの愛も
  忘れないでおこう
  苦悩の後には喜びがあることを

  日は暮れよ 鐘よ鳴れ
  時は流れ ぼくはとどまる

ギヨーム・アポリネール Guillaume Apollinaire (1880-1918) は、20世紀初頭のフランスにおける、ほとんどあらゆる前衛芸術に係わりを持った。今日では詩人としての名声が確立しているが、彼はむしろ美術批評家として出発したのであり、ピカソやブラックのキュビズム、キリコらのフュチュリズム、そしてオルフィズムやシュルレアリズムなどを次々と世に紹介したことで知られた。

ランボーの「イリュミナション」から「デモクラシー Démocratie」 (壺齋散人訳)

  薄汚れた風景の中を旗がなびき、
  田舎者のわめき声が太鼓の音をかき消す

  「俺たちが養うべきは飛び切り皮肉屋の売奴だ
  理屈屋どもの革命などくたばれ

  「気の利いたテンペラ画のような国万歳!
  産業と軍隊のために奉仕せよ

  「ここがどこだろうともういい、おさらばだ
  徴兵に志願して、残忍な哲学を身につけよう
  科学を軽蔑し、快楽に悪知恵を働かせ
  世の中がどうなろうと知ったことか。
  これが本物の行進だ いざ前へ進め」

ランボーの「イリュミナション」から「ボトム」 Bottom (壺齋散人訳)

  俺の寛大な性格にとっても、この世は余りにも刺々しい
  そこで俺は女主人の家で目を覚ますと
  灰色の巨大な鳥となって天井からぶら下がり
  宵闇の中に羽根を垂れていたのだった

ランボーの「イリュミナション」から「戦争 」Guerre (壺齋散人訳)

  少年時代、ある種の空が俺の視力を鍛えてくれた
  その空のあらゆる陰影が俺の表情にも反映し
  様々な現象が生起した。
  今では
  屈折した永遠の瞬間と無限定の定理とが
  俺を駆り立てて、この世界を通過させる
  ここでは俺は、礼儀を以て遇され、
  妙な子どもたちに尊敬され、大いなる愛を注がれるのだ。
  俺は戦争を夢見る
  権利と力との、思いがけぬロジックの戦いだ。

  音楽の一節のようにたわいない

ランボーの「イリュミナション」から、苦悩 Angoisse(壺齋散人訳)

  俺の野望が次々と砕かれていくのを、
  あいつが果たして容認するだろうか?
  - 安楽な最後が苦痛の日々を償い
  - 成功の一日が俺たちの恥辱をなだめてくれるように!

ランボー「イリュミナション」から、「海景」 Marine (壺齋散人訳)

  銀と胴でできた戦車
  鋼鉄と銀でできた船のへさきが
  波を打って進み
  バラの切り株を根こそぎにする
  大地の潮流
  引き潮の巨大なわだちが
  うねりながら東へと広がり
  林立する木立
  防波堤に向けて押し寄せる
  そしてその先端には光の渦が逆巻くのだ

ランボーの「イリュミナション」から「花々」 Fleurs (壺齋散人訳)

  黄金の台の上から
  - 絹の紐や、灰色のガーゼや、緑のビロード
  ブロンズの太陽のように黒ずんだクリスタルに囲まれ
  - 俺は、銀や目や髪の透かし模様をつけた絨毯の上で
  一本のジギタリスが開くのを見た

夜明け Aube (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  俺は夏の夜明けを抱いた。

  宮殿の前には、まだ動いているものは何もなかった。
  水面は動かず
  森の小道には深い影が落ちていた。
  俺は熱い息を弾ませながら、歩いた。
  宝石たちが顔を見合わせ、翼が音もなく舞い上がった。

ランボーの「イリュミナション」から、ヴァガボンド Vagabonds (壺齋散人訳)

  憐れな兄貴よ!こいつのおかげでどれほど眠れぬ夜を過ごしたことか!
  「俺は人生にまじめに取り組んでこなかった。
  俺は人生を甘く見ていた。
  こんなことをしていたら人生から追放され、奴隷の境遇に陥ってしまう。」
  兄貴は俺を運がない奴だといい、異常なほど純真だという。
  そういってあやしい理屈を付け加えるのだ。

街 Ville (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  俺は大都市と称されるこの街の一時的な滞在者だし
  したがっていささかも不平があるわけではない
  家具は変な趣味でごたごた飾られてはいず
  家の外観は都市計画に従って皆一様だ

ある理性に A une raison (ランボー「イリュミナション」から:壺齋散人訳)

  お前の指が太鼓をひと叩きすると
  あらゆる音が飛び出し 新しいハーモニーが生じる

  お前がひと歩きすると 新兵たちの行進のように勇ましい

  お前が頭の向きを変えると 新しい愛が生まれる
  お前が頭をもとに戻すと そこにも新しい愛が生まれる

  「運命を変えよう 疫病を克服してやり直そう」
  子どもたちがそうお前に歌う
  「肝心なのは運と意欲さ」
  皆はお前にそういう

  時が熟せば どこへでも行くさ

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