漢詩と中国文化


杜甫の七言古詩「醉歌行」(壺齋散人注)

  陸機二十作文賦  陸機は二十にして文賦を作る
  汝更小年能綴文  汝更に小年にして能く文を綴る
  總角草書又神速  總角 草書 又神速たり
  世上兒子徒紛紛  世上の兒子徒らに紛紛たり
  驊騮作駒已汗血  驊騮駒と作って已に汗血
  鷙鳥舉翮連青雲  鷙鳥翮を舉げて青雲に連なる
  詞源倒流三峽水  詞源倒(さかしま)に流る三峽の水
  筆陣獨掃千人軍  筆陣獨り掃ふ千人の軍

醉時歌 杜甫

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杜甫の五言古詩「醉時の歌」(壺齋散人注)

  諸公袞袞登臺省  諸公袞袞として臺省に登る 
  廣文先生官獨冷  廣文先生 官獨り冷ややかり
  甲第紛紛厭粱肉  甲第紛紛として粱肉に厭く
  廣文先生飯不足  廣文先生 飯足らず
  先生有道出羲皇  先生道有ること羲皇に出づ
  先生有才過屈宋  先生才有ること屈宋に過ぐ
  德尊一代常坎軻  德一代に尊くして常に坎軻たり
  名垂萬古知何用  名を萬古に垂るるも知らず何の用かある

杜甫の五言律詩「重ねて何氏を過る五首其五」(壺齋散人注)

  到此應常宿  此に到っては應に常に宿すべし
  相留可判年  相ひ留めて年を判ずべし
  蹉跎暮容色  蹉跎す暮の容色
  悵望好林泉  悵望す好林泉
  何日沾微祿  何れの日か微祿に沾ひて
  歸山買薄田  山に歸って薄田を買はん
  斯游恐不遂  斯の游 恐らくは遂げざらん
  把酒意茫然  酒を把って意茫然たり

杜甫の五言律詩「鄭廣文に陪して何將軍の山林に游ぶ」(壺齋散人注)
  
  不識南塘路  識らず南塘の路
  今知第五橋  今知る第五橋
  名園依綠水  名園 綠水に依り
  野竹上青霄  野竹 青霄に上る
  谷口舊相得  谷口 舊(もと)より相ひ得
  濠梁同見招  濠梁 同じく招かる
  平生為幽興  平生 幽興の為には
  未惜馬蹄遙  未だ馬蹄の遙かなるを惜しまず

杜甫の七言古詩「曲江三章章五句其三」(壺齋散人注)

  自斷此生休問天  自ら此の生を斷つ 天に問ふを休(や)めん
  杜曲幸有桑麻田  杜曲 幸に桑麻の田有り
  故將移住南山邊  故に將に南山の邊に移住して
  短衣匹馬隨李廣  短衣匹馬 李廣に隨ひ
  看射猛虎終殘年  猛虎を射るを看て殘年を終へん

貧交行 杜甫

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杜甫の雑言古詩「貧交の行」(壺齋散人注)

  翻手作雲覆手雨    手を翻せば雲と作り手を覆せば雨 
  紛紛輕薄何須數    紛紛たる輕薄 何ぞ數ふるを須ひん
  君不見管鮑貧時交  君見ずや 管鮑貧時の交
  此道今人棄如土    此の道 今人棄てて土の如し

杜甫の五言律詩「前出塞九首其六」(壺齋散人注)

  挽弓當挽強  弓を挽かば當に強きを挽くべし
  用箭當用長  箭を用ひなば當に長きを用ふべし
  射人先射馬  人を射らば先づ馬を射るべし
  擒賊先擒王  賊を擒にせんとすれば先づ王を擒にすべし
  殺人亦有限  人を殺すには亦限り有り
  列國自有疆  國を列(た)つるには自づから疆有り
  苟能製侵陵  苟くも能く侵陵を製せば 
  豈在多殺傷  豈に多く殺傷するに在らんや

杜甫の雑言古詩「兵車行」壺齋散人注
  
  車轔轔 馬蕭蕭     車轔轔 馬蕭蕭
  行人弓箭各在腰    行人の弓箭 各々腰に在り
  耶娘妻子走相送    耶娘 妻子 走って相ひ送る
  塵埃不見咸陽橋    塵埃に見えず咸陽橋
  牽衣頓足攔道哭    衣を牽き 足を頓し 道を攔(さへぎ)りて哭す
  哭聲直上干云霄    哭聲 直ちに上り云霄を干(おか)す

杜甫の五言古詩「諸公の慈恩寺の塔に登るに同じくす」(壺齋散人注)
  
  高標跨蒼穹  高標 蒼穹を跨ぎ
  烈風無時休  烈風 休む時無し
  自非曠士怀  曠士の怀に非ざる自(よ)りは
  登茲翻百憂  茲に登らば百憂を翻へさん
  方知象教力  方に知る 象教の力
  足可追冥搜  冥搜を追ふ可きに足るを
  仰穿龍蛇窟  仰ぎて穿つ 龍蛇の窟
  始出枝撐幽  始めて出づ 枝撐の幽

杜甫の五言古詩「韋左丞丈に贈り奉る二十二韻」(壺齋散人注)
  
  紈褲不餓死  紈褲 餓死せず
  儒冠多誤身  儒冠 多く身を誤る
  丈人試靜听  丈人 試みに靜かに听(き)け
  賤子請具陳  賤子 請ふ具に陳べん

杜甫の七言古詩「飲中八仙歌」(壺齋散人注)
  
  知章騎馬似乘船  知章 馬に騎ること船に乘るに似たり
  眼花落井水底眠  眼は花さき井に落ちて水底に眠る 
  汝陽三斗始朝天  汝陽 三斗 始めて天に朝す
  道逢曲車口流涎  道に曲車に逢ひ 口涎を流す
  恨不移封向酒泉  恨むらくは封を移して酒泉に向はざるを
  左相日興費万錢  左相 日興 万錢を費す
  飲如長鯨吸百川  飲むこと長鯨の百川を吸ふが如し
  銜杯樂聖稱避賢  杯を銜み聖を樂しみ賢を避くと稱す

杜甫の五言律詩「春日李白を憶ふ」(壺齋散人注)
  
  白也詩無敵  白也 詩 敵無し
  飄然思不群  飄然として思ひ群ならず
  清新庚開府  清新 庚開府
  俊逸鮑參軍  俊逸 鮑參軍
  渭北春天樹  渭北 春天の樹
  江東日暮云  江東 日暮の云
  何時一尊酒  何れの時か一尊の酒
  重与細論文  重ねて与(とも)に細やかに文を論ぜん

今夕行 杜甫

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杜甫の雑言古詩「今夕行」(壺齋散人注)
  
  今夕何夕歳云徂  今夕 何の夕ぞ 歳云(ここ)に徂(ゆ)く
  更長燭明不可孤  更に燭明を長くして孤なるべからず 
  咸陽客舍一事無  咸陽の客舍 一事も無く
  相与博塞為歡娯  相与に博塞して歡娯を為す
  馮陵大叫呼五白  馮陵 大叫して五白を呼び
  袒跣不肯成梟盧  袒跣して不肯んぜず梟盧を成すを
  英雄有時亦如此  英雄 時に亦此の如き有り
  邂逅豈即非良圖  邂逅 豈に即ち良圖に非ざらんや
  君莫笑        君笑ふ莫かれ
  劉毅從來布衣愿  劉毅 從來 布衣の愿(ねが)ひ
  家無儋石輸百万  家に儋石無く百万を輸す

遺懐 杜甫

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杜甫の五言古詩「懐ひを遺る」(壺齋散人注)

  憶與高李輩  憶ふ 高李の輩と
  論交入酒壚  交を論(むす)んで酒壚に入りしことを
  兩公壯藻思  兩公 藻思壯(さかん)にして
  得我色敷腴  我を得て色は腴(よろこび)を敷(ひろ)げぬ
  氣酣登吹臺  氣酣(たけなは)にして吹臺に登り
  懷古視平蕪  古を懷ひて平蕪を視れば
  芒碭雲一去  芒碭のかたに雲一たび去り
  雁鶩空相呼  雁鶩 空しく相ひ呼ぶ

杜甫の七言絶句「李白に贈る 其二」(壺齋散人注) 

  秋來相顧尚飄蓬  秋來 相顧りみれば尚ほ飄蓬
  未就丹沙愧葛洪  未だ丹沙を就(な)さずして葛洪に愧ず
  痛飲狂歌空度日  痛飲 狂歌 空しく日を度(わた)る
  飛揚跋扈為誰雄  飛揚 跋扈 誰が為にか雄なる

贈李白 杜甫

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天宝4年(744)の初夏、李白は宦官高力士の讒言によって都を追われ、本拠地だった山東へ向かう途中洛陽に立ち寄った。そのとき洛陽郊外に住んでいた杜甫は、この高名な詩人と運命的な出会いをする。(もっとも杜甫が李白とであったのはこのときが最初ではなく、すでに長安において面識があったとする説もある)

龍門 杜甫

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杜甫の五言律詩「龍門」(壺齋散人注)
  
  龍門橫野斷  龍門 野に橫たはりて斷ち
  驛樹出城來  驛樹 城を出でて來る
  气色皇居近  气色 皇居近く
  金銀佛寺開  金銀 佛寺開く
  往還時屢改  往還 時に屢ば改り
  川陸日悠哉  川陸 日に悠なる哉
  相閲征途上  相ひ閲す 征途の上
  生涯盡几回  生涯 几回にか盡きん

杜甫の五言律詩「宋員外之問の舊庄を過る」(壺齋散人注)
  
  宋公舊池館  宋公の舊池館
  零落首陽阿  零落す首陽の阿(おか)
  枉道祗從入  道を枉(ま)げて祗(ただ)入るに從(まか)す
  吟詩許更過  詩を吟じて更に過るを許す
  淹留問耆老  淹留して耆老に問ひ
  寂寞向山河  寂寞 山河に向ふ
  更識將軍樹  更に識る將軍の樹
  悲風日暮多  悲風日暮に多きを

畫鷹:杜甫

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杜甫の五言律詩「畫鷹」(壺齋散人注)
  
  素練風霜起  素練 風霜起る
  蒼鷹畫作殊  蒼鷹 畫作殊なり 
  竦身思狡兔  身を竦(そばだ)てて狡兔を思ひ
  側目似愁胡  目を側てて愁胡に似たり
  絛鏇光堪摘  絛鏇 光摘むに堪へたり
  軒楹勢可呼  軒楹 勢ひ呼ぶべし
  何當擊凡鳥  何(いつ)か當(まさ)に凡鳥を擊ちて
  毛血洒平蕪  毛血 平蕪に洒(そそ)ぐべき

杜甫の五言律詩「房兵曹が胡馬の詩」(壺齋散人注)
  
  胡馬大宛名  胡馬 大宛の名あり
  鋒棱瘦骨成  鋒棱 瘦骨成る
  竹批雙耳峻  竹批(う)ちて雙耳峻しく
  風入四蹄輕  風入りて四蹄輕し
  所向無空闊  向ふ所空闊を無にし
  真堪托死生  真に死生を托するに堪へたり
  驍騰有如此  驍騰 此くの如き有り
  万里可橫行  万里 橫行すべし

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