漢詩と中国文化


李白の五言律詩「孟浩然に贈る」(壺齋散人注)

  吾愛孟夫子  吾は愛す孟夫子
  風流天下聞  風流 天下に聞こゆ
  紅顏棄軒冕  紅顏 軒冕を棄て
  白首臥松雲  白首 松雲に臥す
  醉月頻中聖  月に醉ふて頻りに聖に中(あた)り
  迷花不事君  花に迷ひて君に事(つか)へず
  高山安可仰  高山 安んぞ仰ぐ可けんや
  徒此揖清芬  徒(た)だ此に清芬を揖す

嘲魯儒:李白

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李白の五言古詩「魯儒を嘲る」(壺齋散人注)

  魯叟談五經  魯叟 五經を談じ
  白髮死章句  白髮 章句に死す
  問以經濟策  問ふに經濟の策を以てすれば
  茫如墜煙霧  茫として煙霧に墜つるが如し
  足著遠遊履  足には遠遊の履を著き
  首戴方山巾  首には方山の巾を戴く
  緩歩從直道  緩歩して直道に從ひ
  未行先起塵  未だ行かざるに先づ塵を起こす
  秦家丞相府  秦家の丞相府
  不重褒衣人  褒衣の人を重んぜず
  君非叔孫通  君は叔孫通に非ず
  與我本殊倫  我と本(もと)倫を殊にす
  時事且未達  時事すら且つ未だ達せず
  歸耕汶水濱  歸耕せよ汶水の濱に

客中作:李白

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李白の五言絶句「客中の作」(壺齋散人注) 

  蘭陵美酒鬱金香  蘭陵の美酒 鬱金香
  玉碗盛來琥珀光  玉碗に盛り來る 琥珀の光
  但使主人能醉客  但だ主人をして能く客を醉はしむれば
  不知何處是他鄕  知らず 何れの處か是れ他鄕

李白の五言絶句「春夜洛城に笛を聞く」(壺齋散人注)

  誰家玉笛暗飛聲  誰が家の玉笛ぞ 暗に聲を飛ばす
  散入春風滿洛城  散じて春風に入りて洛城に滿つ
  此夜曲中聞折柳  此の夜 曲中に折柳を聞く
  何人不起故園情  何人か起こさざらん故園の情

李白の詩「舊遊を憶ひて,譙郡元參軍に寄す」(壺齋散人注)

  憶昔洛陽董糟丘   憶ふ昔 洛陽の董糟丘の
  為余天津橋南造酒樓 余が為に天津橋の南に酒樓を造りしことを
  黄金白璧買歌笑   黄金 白璧 歌笑を買ひ
  一醉累月輕王侯   一醉月を累ねて王侯を輕んず
  海内賢豪青雲客   海内の賢豪 青雲の客  
  就中與君心莫逆   就中君と心莫逆たり
  迥山轉海不作難   山を迥り海に轉じて難しと作(な)さず
  傾情倒意無所惜   情を傾け意を倒(さかじま)にして惜しむ所無し

李白の五言律詩「太原の早秋」(壺齋散人注)

  歳落眾芳歇  歳落ちて眾芳歇(や)み
  時當大火流  時は大火の流るるに當る
  霜威出塞早  霜威塞を出でて早く
  雲色渡河秋  雲色河を渡って秋なり
  夢繞邊城月  夢は繞る邊城の月
  心飛故國樓  心は飛ぶ故國の樓
  思歸若汾水  歸らんと思へば汾水の若く
  無日不悠悠  日として悠悠たらざるは無し

李白の五言古詩「長干行」(壺齋散人注)

  妾髮初覆額  妾が髮初めて額を覆ふとき
  折花門前劇  花を折って門前に劇(たはむ)る
  郎騎竹馬來  郎は竹馬に騎って來り
  遶床弄青梅  床を遶りて青梅を弄す
  同居長干里  同じく長干の里に居り
  兩小無嫌猜  兩つながら小(おさな)くして嫌猜無し

静夜思:李白

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李白の五言絶句「静夜に思ふ」(壺齋散人注)

  牀前看月光  牀前 月光を看る
  疑是地上霜  疑ふらくは是れ地上の霜かと
  挙頭望山月  頭を挙げては山月を望み
  低頭思故郷  頭を低れては故郷を思ふ

李白の七言絶句「山中幽人と對酌す」(壺齋散人注)

  兩人對酌山花開  兩人對酌すれば山花開く
  一杯一杯復一杯  一杯一杯また一杯
  我醉欲眠卿且去  我醉ひて眠らんと欲す卿且(しばら)く去れ
  明朝有意抱琴來  明朝意有らば琴を抱いて來れ

李白の七言絶句「山中問答」(壺齋散人注)
 
  問余何意棲碧山  余に問ふ 何の意ありてか碧山に棲むと
  笑而不答心自閑  笑って答へず心自から閑なり
  桃花流水杳然去  桃花流水杳然として去る
  別有天地非人間  別に天地の人間に非ざる有り

李白の詩「元丹丘の歌」(壺齋散人注)

  元丹丘        元丹丘
  愛神仙        神仙を愛す
  朝飲頴川之清流  朝には頴川の清流を飲み 
  暮還嵩岑之紫煙  暮には嵩岑の紫煙に還る
  三十六峰長周旋  三十六峰長く周旋す  
  長周旋        長く周旋し 
  躡星虹        星虹を躡(ふ)む
  身騎飛龍耳生風  身は飛龍に騎(の)って耳に風を生じ
  橫河跨海與天通  河を橫ぎり海を跨いで天と通ず
  我知爾游心無窮  我知る 爾の游心窮り無きを

懷仙歌:李白

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李白の七言古詩「仙を懷ふの歌」(壺齋散人注)

  一鶴東飛過滄海  一鶴東に飛んで滄海を過ぎ
  放心散漫知何在  放心散漫 知んぬ何くにか在る
  仙人浩歌望我來  仙人浩歌して我の來るを望み
  應攀玉樹長相待  應に玉樹に攀じて長く相ひ待たん
  堯舜之事不足驚  堯舜の事 驚くに足らず
  自餘囂囂直可輕  自餘囂囂 直(た)だ輕んずべし 
  巨鼇莫戴三山去  巨鼇三山を戴きて去ること莫かれ
  我欲蓬萊頂上行  我蓬萊の頂上に行かんと欲す

李白の七言絶句「早(つと)に白帝城を發す」(壺齋散人注)

  朝辭白帝彩雲間  朝に辭す白帝彩雲の間
  千里江陵一日還  千里の江陵一日にして還る
  兩岸猿聲啼不住  兩岸の猿聲啼いて住(つ)きず
  輕舟已過萬重山  輕舟已に過ぐ萬重の山

李白の七言絶句「峨眉山月歌」(壺齋散人注)

  峨眉山月半輪秋  峨眉山月半輪の秋
  影入平羌江水流  影は平羌の江水に入りて流る
  夜發清溪向三峽  夜清溪を發して三峽に向ふ
  思君不見下渝州  君を思へども見えず渝州に下る

李白は25歳の頃、蜀を出て長江を東へと下った。彼の生涯にわたる放浪の旅への出発である。この旅の当初の目的が何だったのか、またそれを支えた資産をどのように調達したのかについては、詳しいことは分っていない。とにかく李白はこの後二度と蜀に戻ることはなかった。

李白は申すまでもなく杜甫と並んで中国が生んだ最も偉大な詩人である。しかもこの二人は李白が11歳年長だったことを考慮に入れても、ほぼ同時代人であった。そこから李杜と並び称されるようにもなるが、これは単に同時代人としての併称であることを超えて、中国4000年の文学の真髄を表した言葉なのでもある。

このサイトでは、中国が生んだ偉大な詩人李白について、その放浪の足取りをたどりながら、代表的な作品を読み解いていきたいと思う。

陶淵明「山海経を読む」から其十三「帝は用才を愼しむ」を読む。

陶淵明「山海経を読む」から其十「精衞銜微木」を読む。

陶淵明「山海経を読む」から其九「夸父誕宏の志」

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