詩人の魂


マルスリーヌ・ヴァルモール Marceline Desbordes Valmore の詩「さよならといわないで」Jamais adieu(壺齋散人訳)

  行かないで いっしょにいて
  愛しているのよ 信じて欲しい
  死は一瞬にして愛するものを引き離す
  あなたも同じことをするのね!

マルスリーヌ・ヴァルモール Marceline Desbordes Valmore の詩「変わりたい」L'espoir(壺齋散人訳)

  違う愛し方だってあるのよね!
  わたしだって幸せになりたい!
  でもわたしには愛がつらいの
  苦痛にしか感じられないの
  幸せになることだってできるのにね!
  違う愛し方だってあるというのにね!

マルスリーヌ・ヴァルモールの詩「あの人を見て」Regarde-le(壺齋散人訳)

  あの人を見て ちょっとでいいから
  一目みるだけでいいの
  あれがわたしの青春を台無しにした人
  そんな人をわたしは許そうと思うのよ
  あの人を見て ちょっとでいいから

マルスリーヌ・ヴァルモール Marceline Desbordes Valmore の詩「戻ってきたあの人」Son retour(壺齋散人訳)

  ああ あの人を憎みたい気持ち
  だってわたしの心をもてあそんで
  涙と愛の炎でいっぱいにしたのだもの
  悲しすぎてすぐには治らないわ
  ああ ほんとうに憎みたい気持ち
  あの人のおかげで苦しみばかり
  あの人がいなくならない限り収まらないわ
  あの人がそばにいて
  わたしの名を呼ばれたりすると
  わたしは苦しくてたまらなくなるの

マルスリーヌ・ヴァルモールの詩「贈り帰された花」La fleur renvoyée(壺齋散人訳)

  甘美な気分も
  楽しい思い出もさようなら
  わたしの心は傷ついて
  あなたにはもう治せない
  軽やかな希望に満ちた
  あの幸せな日々は
  つかの間のことだったのね
  あなたのくれた花みたいに

マルスリーヌ・ヴァルモールの詩「もうわからないわ」Je ne sais plus, je ne veux plus(壺齋散人訳)

  もうわからないわ 自分が怒ってる理由が
  あのひとは とぼけてるし
  眼では哀願し 唇では媚をつくる
  そんなのを見ると怒りのやり場がないわ
  もうわからなくなるわ

マルスリーヌ・ヴァルモールの詩「初恋」Le Premier Amour(壺齋散人訳)

  あなたは覚えているかしら あの
  やさしい瞳をした 物腰さやかな乙女のことを?
  まだ青春を迎えたばかりというのに
  あの子はあなたに夢中になったのよ

マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモールの詩「思い出」Souvenir(壺齋散人訳)

  ある夜 色青ざめて声を震わしながら
  あのひとが言いかけた言葉を飲み込んだときも
  燃えるようなまなじりを吊り上げて
  あのひとの眼がわたしを鋭く見据えたときも
  決して消えることのない炎に照らされた
  あのひとの苦しそうな表情が
  わたしの心の底にくっきりと刻まれたときにも
  あのひとはわたしを愛していなかった
  わたしはあのひとを愛していたのに

マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモールの詩「不安」L'Inquiétude(壺齋散人訳)

  わたしを不安な思いにするのは何 わたしは何を待っているというの
  町にいれば悲しいし 村の生活は退屈なの
  わたしの年に相応しい楽しみでは
  時間をつぶすことさえままならないの

マルスリーヌ・デボルド・ヴァルモール Marceline Desbordes=Valmort の詩「エレジー」Élégie(壺齋散人訳)

  夜 風がわたしの竪琴を吹きすぎる
  竪琴はわたしのそばで目覚めていて
  悲しく切ない泣き声をあげているの
  あなたのことを求め続けているの
  わたしに代わってあなたの名前を呼び続けているの
  なのにあなたは人の気持ちを踏みにじるばかり
  竪琴の切ない思いを聞こうともしない
  あなたの名を求め続けるわたしの歌を聞こうともしない

ポール・エリュアールの詩「ぼくは君に語りかける」L'absence(壺齋散人訳)

  ぼくは君に語りかける 町の彼方から
  ぼくは君に語りかける 草原の彼方から
  ぼくは唇を君の耳に密着させようとする
  すると壁の表裏両面がひとつの面となり
  君を求めるぼくの声を受け止める

ポール・エリュアールの詩「恍惚」L'extase(壺齋散人訳)

  ぼくはこの不思議な光景を目の前に見ている
  火を目の前にした子供のように
  口には薄笑いを浮かべ 目からは涙を流しながら
  その光景の前で ぼくの中のあらゆるものがうごめいた
  曇った鏡にも 光り輝く鏡にも
  裸のふたりが映ったのだ 季節と季節がせめぎあうような

ポール・エリュアールの詩「自由」Liberté(壺齋散人訳)

  学習ノートに
  机に 木々に
  砂に 雪に
  ぼくは書きつける

ポール・エリュアールの詩「ゲルニカの勝利」La victoire de Guernica(壺齋散人訳)

  美しい世界が廃屋にも
  夜にも 野原にもある

ポール・エリュアールの詩「豊穣の瞳」Les yeux fertiles(壺齋散人訳)

  君がぼくを知っているほどに
  ぼくを知っているものはいない

ポール・エリュアールの詩「恋する女たち」Amoureuses(壺齋散人訳)

  女たちは肩をいからせ
  意地悪そうで
  尊大な顔つきをしてる
  胸は自信で膨れ上がり
  おっぱいから日が昇り
  夜を追い払うかのようだ

ポール・エリュアールの詩「新たな夜」Par une nuit nouvelle(壺齋散人訳)

  ぼくが一緒に暮らしてきた女
  ぼくが一緒に暮らしている女
  ぼくが一緒に暮らしていく女
  いつも同じ女だ

ポール・エリュアールの詩「悲しみよ こんにちは」À peine défigurée(壺齋散人訳)

  悲しみよ さようなら
  悲しみよ こんにちは
  お前は天井の線の中に書き込まれている
  お前は愛する人の目の中に書き込まれている
  お前は悲惨さなんかじゃない
  どんな貧しい人でもお前の名を口にするのは
  微笑みながらだ

ポール・エリュアールの詩「見失ったもの」A perte de vue(壺齋散人訳)

  木々 枝々 葉の繁み
  根元には草むら 岩 重なり合った家々
  遠くの海では君の瞳が泳いでいる
  これらのイメージが日々新たに沸き起こる
  美も醜も不完全だから

ポール・エリュアールの詩「愛の季節」La saison des amours(壺齋散人訳)

  なぎさの道を通って
  落ち着かない夢の中のひだのような影となって
  ぼくは君のもとへやってきたよ ぼんやりとでしかないけど
  デルタの時代を感じさせる君のもとへやってきたよ

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