詩人の魂


ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「ヒトコブラクダ(Le Dromadaire)」(壺齋散人訳)

  ジャン・ド・パリはカッコいいな
  12頭の足早ラクダと一緒で
  ジャン・ド・ボルドーはカッコいいな
  14頭のフタコブラクダと一緒で
  でもジャン・ド・マデールのほうがカッコいい
  20頭のヒトコブラクダと一緒だから

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「ガマガエル(Le Crapaud)」(壺齋散人訳)

  マルヌ川の岸辺に
  一匹のガマガエルがいて
  アカシアの木の下で
  熱い涙を流していました

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「カッコウ(Le Coucou)」(壺齋散人訳)

  四月がやってきたら
  朝から晩まで一日中
  カッコウの歌を聴こうよ

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「カワカマス(Le Brochet)」(壺齋散人訳)

  カワカマスは
  とんがり口だよ
  どこだってとんでく
  ガンジスやナイル
  タホやティベーレ
  揚子江にだって
  気に入ったところなら
  いつでもとんでくんだ

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「刷毛(Le Blaireau)」(壺齋散人訳)

  ひげを生やしたいけど
  刷毛でひげを作ろうか
  それともルバーブで作ろうか
  ネギのひげで作ろうか

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「亀(La Tortue)」(壺齋散人訳)

  僕は亀だよ かっこいいだろ
  羽があったらもっといい
  そうすればひばりのまねができる
  え? 何だって?

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「キリギリス(La Sauterelle)」(壺齋散人訳)

  ジャンプ ジャンプ キリギリス
  だって今日は木曜日ですよ
  ジャンプしますとキリギリスはいった
  木曜日から土曜日へ一足飛びに

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「いわし(La Sardine)」(壺齋散人訳)

  ロワイアンのいわしが
  ジロンド川で泳いでた
  空は大きく 地球は丸い
  僕もロワイアンで泳ぎたい
  いわしと一緒に
  ジロンド川で
  海軍万歳
  皆さんこんにちは

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「キリン(La Girafe)」(壺齋散人訳)

  キリンさんと風見鶏さんが
  南の風と東の風
  ひばりさんにご挨拶
  北の風と西の風

ロベール・デスノスの「お利口さんのおとぎ歌」から「アリ(La Fourmi)」(壺齋散人訳)

  アリの身長が18メートルもあって
  頭に帽子をかぶってるなんて
  そんなことアリっこないさ

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「てんとう虫(La Coccinelle)」(壺齋散人訳)

  バガテルのバラの花に
  てんとう虫がひそんでました
  プロヴァンスのバラの中で
  120まで数を数えました

ロベール・デスノスの「お利口さんのおとぎ歌」から「蝙蝠(La Chauve-souris)」(壺齋散人訳)  

  四旬節の中日や カーニバルの日には
  サテンのマスクをかぶるものさ
  でもお祭りが終わるとマスクはどこへ?

ロベール・デスノスの「お利口さんのおとぎ歌」から「くじらさん(La Baleine)」(壺齋散人訳)

  くじらさんはえらいな
  水の中でもおぼれずに
  赤ちゃんにお乳を
  飲ませてやるんだもの

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「熊さん(L'Ours)」(壺齋散人訳)

  でっかい熊さん 檻の中
  ハチミツにつられて入ったとさ

  竜の落とし子に栄光あれ
  海の馬 濡れた馬
  どんなジョッキーも乗りこなせない
  どんな調教師も手なずけられない

  ハイヨ ハイヨ ハイヨ いい子だ

ロベール・デスノスの「お利口さんのおとぎ歌」から「かたつむり(L'Escargot)」(壺齋散人訳)

  お天気はどう?
  カタツムリがいいました
  お天気がいいと
  都合が悪いの
  雨降りのほうが
  都合がいいの

ロベール・デスノス「お利口さんのおとぎ歌」から「ワニ(L'Alligator)」(壺齋散人訳)

  ミシシッピの川辺に
  ワニがいっぴき潜んでました
  そこへ男の子がとおりがかると
  「こんにちは お坊っちゃん」

ロベール・デスノスの辞世の詩「最後の歌(Dernier Poeme)」(壺齋散人訳)

  僕はこんなにも君を夢見ながら
  こんなにも歩き回り 
  こんなにもおしゃべりをし
  こんなにも君の面影を追ったために

  僕に残されたのは君だけになった

  僕はもはやただの幻にすぎないけれど
  普通の幻より百倍も幻らしい幻となって
  君の輝かしい人生の中に何度も甦ることだろう

ロベール・デスノスが歌うとらわれ人の詩「テレ-ジエンシュタット収容所(Le camp de concentration de Theresienstadt)」(壺齋散人訳)

  今宵僕が歌うのは戦うことではなく
  日々を大事にすることさ
  生きることの楽しさや
  友達と呑むワインのうまさ
  愛や
  ともし火や
  夏のせせらぎ
  食事のたびのパンと肉
  道端を歩みつつ口ずさむルフランの調べ
  安らかで苦悩を知らぬ
  眠りのこと
  別の空を見る自由
  そして尊厳の感覚と
  他人の奴隷になることを拒む勇気だ

ロベール・デスノスのレジスタンスの詩「戦争を憎んでいたこの心が(Ce cœur qui haïssait la guerre...)」(壺齋散人訳)

  戦争を憎んでいたこの心が 闘いを前にして高鳴っている
  潮のリズムや季節のリズム 時の流れにしか共振したことのないこの心が
  たぎる血が血管を満たし 火薬と憎しみではちきれそうになり
  耳鳴りがする程に脳みそを音で満たし
  音は外へと広がって町や野原を覆い尽くす
  鐘の音が反乱と戦争に向け人々を鼓舞するように

Previous 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11




アーカイブ

Powered by Movable Type 4.24-ja

本日
昨日

最近のコメント

このアーカイブについて

このページには、過去に書かれたブログ記事のうち65)詩人の魂カテゴリに属しているものが含まれています。

前のカテゴリは64)20世紀サウンズです。

次のカテゴリは66)ボードレールです。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。